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復帰

 駐屯地に帰って来てから2日間は、レンジャー訓練で使った資材や武器の手入れの日となり、3日後に中隊に復帰となった。 生活がまたがらりと変わるわけだが、心身はレンジャーでの苛酷な状況に適応していたため、平穏な日常生活を送る上で支障をきたす日々がしばらく続く。 朝目覚めたとき、自分がどこにいるのか分からなくなったり、すぐに慌てて何かをしようとしたりした。 夜寝るときも、眠りながらも非常呼集に備えてしまう習慣はなかなか抜けなかった。 特に笛の音には敏感だった。 笛の音は非常呼集を意味するため、それに似た音が聞こえる度に、全神経が持っていかれた。 その症状は長く続いた。街を歩いていても似たような音が聞こえると、一瞬で非常呼集時のフラッシュバックが起こった。 空腹感もしみついていた。どれだけ食べても満腹にならない。常に腹が減っていた。体重はどんどん増えていった。 からだのあちこちには山でついた傷や装備品でできたアザが残っていた。 目に見えない内臓器官なども、健康診断の結果で異常がわかった。 特に肝臓が弱っていて、よくなるまで酒はひかえるように言われた。 身体面の後遺症はさほど問題ではない。自然と良くなる。 だが問題はやはりメンタル面だ。レンジャー訓練が強烈だっただけに、時々虚無感や脱力感を感じてしまうことがあった。 レンジャー訓練は辛く耐え難いものだったが、そこで学んだことは非常に大切なことばかりだった。 だがそれらの技術や知恵をもっと磨いていくには、これからどうすればいいのかすぐには分からなかった。 新しく生まれ変わったような違和感を覚え、自分の内面にあるものと自分の置かれた環境とのギャップをどうしようかと考えていた。 大きくジャンプをしたはいいが着地地点が見いだせずに漂っている感じだった。 しばらくはそうやって過ごすことも心身を回復するためには必要かもしれない。しかし、いつまでもそうしてはいられない。とはいえ、レンジャー訓練を終えたからといって中隊にレンジャー専用の仕事があるわけではない。錬成訓練もあるが期間は短く単発的だった。 レンジャー訓練終了後は、自ら求めてレンジャー隊員とはどのようにあるべきかを探していくほかないのである。 今思えば、俺は単なる無知で職業としての自衛官の立場をきちんと考えていなかったことがいけなかったと思う。そのまま、次はまっすぐに陸曹を目...

終了式

 「レンジャー戦闘隊、まわれー右!」 約2000人の各部隊と向き合う形となった。 「婦人自衛官の皆様から学生一人ひとりに月桂冠が送られます」 「レンジャー学生は鉄帽を右手に持て!」 鉄帽を取り、右手に持った。 俺達の頭に月桂冠が被せられた。 勝利の栄冠である月桂冠は、月桂樹の枝葉を輪にして冠としたものだが、顔にべったりとドーランを塗り、山奥から帰って来たばかりの俺達は、葉っぱの冠を被るとジャングルの部族に見えなくもない。 目の前には出迎えてくれた多くの部隊の人達。自分の帰る中隊も近くに見える。 集まって頂いた皆さんに、学生を代表して学生長がお礼の言葉を述べた。 そして終了式の最後、連隊長からの訓示の中で、 「君達はレンジャーとしてはまだ生まれたばかりだ。今後はそのレンジャーバッジをより輝くものとしてほしい。そして連隊のため、ひいては日本のために頑張ってもらいたい」 という言葉が心に残っている。 レンジャー養成訓練は終わった。だがそれは、レンジャー隊員としての始まりにすぎない。レンジャーバッジを手に入れた瞬間、俺達は新たなスタートをきっている。 「連隊長に敬礼」 「部隊気を付けーー!」 「敬礼!」 「なおれ!」 盛大な終了式が終わり、各部隊は解散となった。 俺達は各個にそれぞれの所属する中隊長のもとへ行き、レンジャー訓練の終了報告を完了させた。 中隊長は訓練期間中、何度も激励に来てくれた。 この中隊から送り出した1名として、期待をかけてくれていたのだ。 その期待に応えることができた。こんなに幸せなことはない。 終了報告を完了すると、俺達は室内に入るよう言われた。 用意された部屋で、学生の両親や友人、上司、先輩に囲まれて軽い食事も取り、長距離離脱の疲れを癒した。 俺はレンジャーバッジを両親に見せた。 両親は感心しながらも俺のからだを心配そうにしていた。 実際に、最終想定で10kg近く体重が落ちていた。 だが気持ちはすごく充実していた。 これからは何でも新鮮な気持ちでやれそうだ。 山の中であれもしたいこれもしたいと考えていたことを全部やってやろうと思った。 それを考えていて気がついた。 レンジャー訓練で味わった困難や極限状態に比べれば、自分はなんというたやすい世界に戻ってきたのだろうと思った。 それは驚きとともに、大きな発見だった。 俺は変わり、世界も変わっていた...

長距離離脱

 夜が明けて、レンジャー戦闘隊は訓練最後の任務である駐屯地への帰来を果たすべく、ベースキャンプを出発した。 キャンプ場をあとにしてしばらく歩くと、この町の民家や商店が集中しているちょっとした通りに出る。 そこを通る時、たくさんのこの町の人々が沿道に並んでいた。 俺達を拍手で見送ってくれたのである。 この場所には、各想定が終わる度に来た。俺達にしてみればオアシスのような町だ。 物々しい自衛隊の車両で来ては慌ただしくお風呂に入り、〈三歩以上駆け足〉で走り回って買い物をした。 かどのお店で肉まんやあんまんを買い食いしたこともなつかしい。 レンジャー訓練を成し遂げたら今度は遊びでゆっくり来たいと思った。 長距離離脱は多くの人に見送られて賑やかな出発となった。 町を背にして再び俺達は山の中へと進路をとる。 険しい斜面で心臓がバクバクしても、これで本当に帰れるという想いが気分を明るくした。 だがそれも最初だけだった。 やはり昨日までの第9想定での疲労が残っている。 精神的にもなかなか終わりが見えない距離に、時に絶望さえ感じた。 進めば進むほど苦しくて弱気になってくる。 日が落ちるころ、残り約40kmの地点まで来た。 そこで2回目の休憩となった。 約100kmの行程から見れば半分以上来たということだが、まだ40kmも手前では駐屯地が遥か彼方に思えた。 ここから先がさらに苦しかった。 夜になり、すでに深い山々からは脱して峠の車道も歩くようになった。 落ちている空き缶があると思わず蹴飛ばした。喉の渇きがそうさせる。 仲間どうし背中を押したり押されたりして進んでいった。 苦痛を通り越してフラフラになっていた。 途切れ途切れの意識の中、ひたすら足を前に出すことに集中しようとした。 もう少しだと思い続けようとするが、しばらくすると意識を失って歩いていたことに気づくという状態だった。 3回目の休憩地点に到着。出発してから13時間が経っていた。 そこでは各中隊から来ている、学生達の上司の姿があった。 励ましの声に温かみを感じ、嬉しかった。 駐屯地や自分の部隊のなつかしさが沸いてきた。 ここを最後の休憩地点として再びレンジャー戦闘隊は出発。 俺の場合、そこで少し気が緩んでしまったかもしれない。そのあとは、沼にはまったかのようにからだが重く感じられた。 最終目標は駐屯地の正門近くにある。 ...

100km手前

 最終想定の任務、橋梁爆破と伏撃を終えて一旦ベースキャンプに帰来した。 想定中の記憶は大部分が飛んでいる。 爆破で覚えているのは、仕掛けた爆薬から導爆線を引いていく模様だ。 敵に見つからないようにほふく前進とかもしたかもしれない。 伏撃では敵の車両部隊を待ち伏せして攻撃した。 峠道の山側の斜面に身を潜めていたことを思い出す。 橋を爆破し、車両部隊への伏撃が成功して即離脱。 そして再び長い行軍。苦痛と睡魔、喉の渇きと空腹との闘い。 何日間に及ぶ極限状態の中、教官助教に喝を入れられながら、同期のみんなで励ましあいながら、レンジャー戦闘隊は再びベースキャンプに辿り着いていた。 この最終想定が終わるのは100km離れた駐屯地でだ。 まだ100kmある。 今回の最終想定ではベースキャンプは折返し地点にすぎない。 だが徒歩による駐屯地までの長距離離脱が終わると同時に、このレンジャー訓練最後の想定も終わり、そしてすべてのレンジャー訓練の課程が修了するのだ。 100kmという距離は、すでに満身創痍の俺達のからだでは気の遠くなるほどの距離だ。 最後の最後まで決して気は抜けない。 ひとたび歩き出せば、30~40kgほどの装備が重くのしかかり、徐々に体力を奪っていく。 出発までに体力が回復してくれることを祈った。 幸いにもベースキャンプでは食事にありつくことができた。 訓練地域の民間の人達からの差し入れで、元気そうなニワトリ10数羽を頂いた。 ニワトリが動く肉の塊りに見えてくる。 みんなで分け合い、ナイフで捌いて焼いて食べた。 だがこれも訓練のひとつ。普段食べているおいしいところだけでなく頭や足などグロテスクな部分も、食べられるところはすべて食べねば許されない。気味が悪いとか言ってられない。 このニワトリたちのお陰で栄養補給ができた。 長距離離脱の出発は翌朝だった。 もうすぐ、ベースキャンプともお別れだ。 そうしたらレンジャーバッジが射程圏内に入る。 死ぬほど長く感じた訓練も最後の課程である長距離離脱のみとなった。 暗闇に光が差している場所を、遥か遠くに見つけた想いだ。 どん底の暗闇に落ちてはじめて、そこに光が差していたことに気づいた。 レンジャー訓練に参加する前の深く考えてもみなかった物事、水筒のキャップ一杯分の水の有難さ、おいしさ。 必ずしも今日食べれるとは限らない日々に、あ...

最終想定へ

 ある日の早朝。暗闇の中。 「ピッ」 俺達が寝ている天幕に笛が吹かれた。 その瞬間皆一斉に飛び起きた。 非常呼集だ。 「非常呼集。ただちに集合せよ。服装は迷彩服上下半長靴、弾帯……」 服装と集合場所を告げて助教がすぐに出て行った。 心の中で悲鳴を上げながらも全速力で着替え、靴を履く。 着替えながら煙草に火をつけ、枕元に置いておいた食べ物と栄養ドリンクをかきこんだ。 指定の場所へ全員そろって駆け足。整列して点呼報告。笛が鳴ってから報告が完了するまで、その間数分。 「総員16名。事故3。事故の内訳××××。現在員15名。その他健康状態異常なし!」 点呼終了。教官から命令が下達される。 次の新たな任務。レンジャー戦闘隊の編成。 そして今回の任務完了後の最終離脱目的地は駐屯地だということが告げられる。 駐屯地……!一瞬なつかしさが込上げる。 いよいよ最後の想定訓練に入るということだ。 第9想定。これがラストだ。 行動計画を立て、装備を整えたら出発準備となる。 最後の山場。長い想定訓練になりそうだが、ゴールは確かに存在し、そして近づいているのだ。 想定訓練中は疲労のせいで自分の人生の記憶が思い出せずに悩んだ。 断片的な記憶はあるが、あまりに今の自分の生活とはかけ離れすぎている。 レンジャー訓練以外の日々が消し飛んでしまっていた。 当時20歳だった俺にとって、その断片的だが思い出される記憶とは両親のことだった。 自分をここまで育ててくれた人の愛情が、自分に何があっても、まるで魔法のように効いていることを知った。 それだけは決して忘れない。 あと自分の好きな映画や音楽はよく覚えていた。ひたすら歩き続ける行軍ではこれらの記憶を積極的に思い出していた。 高校の時に観に行った「ロッキー4」は歩きながら何度も繰り返し思い返していた。 ストーリー、音楽ともに勇気や情熱が湧いてくる映画だ。 好きな歌の歌詞もよく覚えていて、高校時代明け方に起きた時によく聴いていた歌は想定訓練中でも、山で夜明けが近づくと思い出した。 考えてみればレンジャー訓練以外のことは、心を奮い立たせるような記憶だけに削ぎ落とされていたように思う。 また訓練期間中は次から次へと先を見据えていなければならず、眠りにつく時でさえ過去を振り返っている暇がなかった。過去を振り返らず、ただ明日のための今に集中せざるを得ない状況...

ベースキャンプ

 俺達のレンジャー訓練隊には「レンジャー数え歌」という歌がある。 「ひとつとせ 人の嫌がるレンジャーに 好んで来るよな バカもいる」 「そいつは剛気だね そいつはレンジャーだね」 「ふたつとせ ふいて磨いた半長靴 腕立て100回 また100回」 「そいつは剛気だね そいつはレンジャーだね」 レンジャー訓練の苦しさを明るく吹き飛ばすような歌だ。 一から十までの数え歌をみんなで歌いながら、今までやってきた訓練を思い起こした。 教官、助教も自分が学生だった時のことを思い出すだろう。 皆同じ経験をしてきているのだ。 そして左胸に付いているレンジャー徽章を勝ち取り、今こうして教官、助教としてレンジャー訓練に関わり続けているのだ。 俺は自衛隊入隊当時にレンジャーの存在を知り、自分も志願することができると分かった瞬間、挑戦を決意した。 初めてレンジャー隊員を見たときは、同じ人間とは思えないような異様な印象を受けた。顔つきや物腰から漂う雰囲気が、今まで見たどんなタイプの人間とも違って見えた。野性味と上品さを兼ね備えているような印象とでもいおうか。よくわからないがその迷彩服の姿が強く心に刻まれた。 彼らの左胸にはレンジャー徽章があった。強くなりたかった俺は素直に憧れた。入隊当時はよく何も知らないで全く無謀な考えだったと思う。 だが、それからというもの俺は毎日自分を鍛えに鍛えた。中隊の訓練が終わってからも夜走ったり、筋トレをしたりした。雨でも雪でも走って走って、両足が疲労骨折を起こした。 中学高校とまともにスポーツをしてこなかった俺のからだは悲鳴を上げた。 とにかく馬鹿みたいに鍛え、入隊して10か月後にはレンジャー志願を上司に受け入れてもらった。レンジャーについては知れば知るほど不安になったが、逆にそれについていけたら俺は変われると思えた。 レンジャーバッジを手に入れることが、自分にとっては不可能を可能にする程の強さや栄光の証しだった。 レンジャー隊員は、訓練する技能の分野は多岐にわたり、限界に挑戦し、どんな困難をも克服して任務を完遂する能力を修得し、不屈の精神力を練成する凄まじい訓練を受ける。 その訓練を修了したことの証しとしてレンジャーバッジが授与される。 そのバッジと共に、手に入るものは計り知れない。 手に入るものとはもちろん、形のあるものではない。 「カンパーイ!!」 ...

帰来

 目の前に輸送用中型トラックがいる。 徒歩での離脱を終える合流地点に到着だ。 想定ではこのトラックをヘリコプターと見なすため、身をかがめながら駆け足で接近し、全員すばやく乗り込んだ。 ベースキャンプへ向け、トラックが動き出す。 助手席に座った助教が仕切りの窓から「水を飲むな」とか「物を落とすな」とか言っていた。 返事はできるが頭の中は真っ白だった。 ただ、さっきまで自分達がいた場所、歩いていた地面が遠ざかっていくのを肌で感じていた。 荷台に座ってぼうっと一点を見つめていたと思う。 靴の中は靴擦れでヒリヒリ。腕は重量物のおかげで痺れている。 皆弱りきって体重は落ち、迷彩服からは異臭が立つ。 ただ眼光だけが皆異様に鋭く光っている。 皆の姿かたち、顔立ちと体つきの変わり様は親でも一瞬自分の息子かどうか分からないだろう。 ベースキャンプでトラックが停止した。 一つの想定訓練が終わろうとしていた。 全員整列。報告を終え任務完了。 想定訓練の「状況終わり」が告げられる。 教官のほうから非常にけじめのあるセリフがあるのだが忘れてしまった。 とにかく、これでいったんレンジャー戦闘隊の編成は解除され、その後武器の手入れや各装具の整備の時間となる。 服装がジャージ上下に運動靴になった。からだが軽い。 足の靴擦れがひどく、皆足を引きずっていた。 1リットルのジュースを一気飲みした。口をつけたまま飲み干すまで止まらなかった。 一気に空になるペットボトルを見て自分でも苦笑。 甘いものばかりたくさん食べた。 食事も何回もおかわりした。どれだけ食べても満腹感が得られない。満腹中枢が完全に麻痺している。 時間が決められているのでしょうがなく食べるのをやめるという状態である。 皆殺気立って飲み食いしていた。 食事の時間以外でも許される限り常に何かを食べていたと思う。 干ししいたけを水に浸けたみたいにからだがむくんた。 山に来て最初のころ、想定と想定のあいだに日にちがなく、次の日の早朝に非常呼集がかかったが、訓練も終盤に入ってくると、1回の想定訓練の日数も増え、その分整備仕事がメインのゆっくりした日もあるのだ。 束の間の平和な日。食事もとれる。ジュースも飲める。近くの旅館でお風呂に入ってついでに買出しもできる。そして夜には寝ることができた。 朝目覚めて、今日は非常呼集がかからないと分かった日は...

離脱

 自分のからだに残っているエネルギーがもう残り少ないことを感じつつ、一歩一歩足を前に運んだ。 救出地点までの道のりは長い。 隊の行進も間隔が開いてきた。重量物を担いでいる者、疲労困ぱいに陥っている者がどうしても遅れるのである。 間隔が開きすぎれば先頭は停止し、差を縮めては前へと進む。 各人の武器装具は想定によって決められている。 戦闘隊長の組、前方警戒班の組、無線手以外の人員が資材や機関銃、無反動砲などの重量物を分担し、交代で持つ。 これらの役割は各想定ごとに交代する。 一度疲労困ぱいになると、荷物を減らし休憩をとらなければ復活するのは難しい。 だんだん重量物を持つ者も限られてくる。 フラフラになっている者の背中を押して歩く者、小銃を2丁持つ者が出てくる。 皆限界を通り越していた。 ガシャッ 誰かが倒れた音だ。 とうとう倒れる学生も出てくる。 停止命令がかかり、救護の助教が駆けつける。 何とか息を吹き返し、彼は復帰するがその後も倒れ、とうとう病院へ運ばれた。しかし数時間後に再度復帰し、最後まで彼は歩ききった。 だが1名だけどうしても訓練について来られなくなっている学生がいた。 ここまで仲間どうしカバーし合い、励まし合ってきたが彼を引っ張っていくことができなかった。彼は原隊復帰(リタイア)となってしまった。 これはみんなの責任であり、俺達全員の状態を象徴する出来事だ。 人間は苦しいと自分のことで精一杯になってしまう。 だが全員がそれでは次々と脱落する人間を待つだけとなってしまう。 自分が苦しい時はみんなも苦しい。だからそういう時こそ励まし合わなければいけなかったはずだ。 俺達はもう一度、団結力の大事さを肝に銘じた。 1名原隊復帰で俺達レンジャー戦闘隊は16名となった。 その後も倒れる者、病院へ運ばれる者が出たが、この16名で最後まで乗り切ることができた。 みんなで支え合わなければレンジャー訓練は乗り切れるものではない。 もちろん最後は自分との闘いだ。だがそれは自分に向ける言葉であって、手放しで人に向けるものではない。 倒れそうになる心を甦らせるのはいつでも誰かの声だ。誰かの存在だ。 誰かがついて来られなくなったのなら、それはみんなの責任なんだ。 レンジャー訓練も最終段階に来ているこの状況では、皆分かっている。 仲間がいてくれたから自分はここまで来れたんだという...

戦闘

 いよいよ戦闘開始だ。 深夜の静寂を破って空砲と擬爆筒が響き渡る。 ドカーン!バンバンバンバン!ダダダダダダン!! 始まった。何とか任務を完了してすぐに脱出しなければならない。 敵も撃ってくる。敵の上官がわめいている。 バンバン!バンバンバンバン! 敵兵が出てくる。めまぐるしい状況。次第に状況が把握できなくなる。 『みんなは大丈夫か?』 『今、この作戦はうまくいっているのか?これでいいのか?』 ただでさえ疲労や空腹で頭が働かない。 しかし状況がボーッとすることを許してくれない。 強制的に目を覚まさせようとする。 敵との交戦。鼓膜に響く大きな音。収拾のつきそうにない修羅場。 いろんな状況に出くわし、どうすればいいのか分からないことも多かった。 動きながら同時に先へ先へと考えていかなければならない。 考えて考えて考え抜かなければ、瞬間瞬間を乗り切れない。 だが非常事態がからだを反射的にシャキッとさせるが、苦痛が思考回路を弱らせる。 助教がよく言っていた。 「考える時は頭から血が出るほど考えろ!」 こんなセリフはレンジャーに来るまで聞いたことが無い。 人体の構造的に、どれだけ考えても頭から血は出てこないだろうが、要は何事でもとことんやり抜いてしまえということだ。 自分が今限界に達したということを、最後まで自分で知ることはできない。 その時は倒れた時だからだ。 自分で限界だと思うのは、限界寸前のところまでだ。 しかし自分がもう限界だと感じても、そこからが本当に長い。 極限状態……この状態のまま長い時間を経験する。 自分が限界だと思ってもまだずっと先がある。 もう駄目だ、もうもたないと思っても終わるものではない。 『もうあと少し、これをやりきれば……』 毎瞬毎瞬思いながら10時間、20時間、30時間…… 『もうあと少し、あそこまで行こう……』 数メートル歩く度に思いながら、10km、20km、30km…… 思えばこんなふうに瞬間瞬間の過程をただひたすらつないでいった。 振り返ってみれば、こうやって限界をいくつも超えていくことができた。 「苦しい時こそレンジャーだぞ」 教官、助教がよくそう言った。 苦しい時こそ、逆境の時こそレンジャーとしての真価が問われているということだ。 「レンジャー」という言葉は特別な意味を持つ。そして力を持っている。 陸上自衛隊最高の栄光、究極の...

偵察

 どうやら敵の陣地近くの目的地に到着したようだ。 ここを拠点としてこれから現地の偵察だ。 このあたりの詳しい実施内容は、記憶が途切れ途切れで思い出せない部分が多い。 山での想定訓練も3週間で1~9想定まであるが記憶がごちゃごちゃになっている。当時俺は20歳だった。それから15年も経っている。 今でも時々記憶が甦ったり夢に出てきたりするが、忘れていることのほうが多い。逆に忘れられないシーンは何度も繰り返し思い出す。 この壮絶な体験は一生忘れることはできないが、極限状態での飛んでいる記憶を何とか思い出せるきっかけを作っていきたい。 偵察活動でよく覚えているのは捕虜になる恐怖だ。 敵に見つからないように接近して情報収集などをするのだが、待ち構えているのは助教達だ。 夜、暗い山の中に発電機の音が聞こえる。 山頂にある神社の敷地内に、敵の宿営地があった。 軽装備になった俺達は敵の人員や車両などを把握するために近づく。 天幕を出入りする人間が見える。中から明かりがこぼれてくる。 中は温かそうだ。11月の夜の山は凍えるほど寒い。 ふと天幕の横に目をやると、紐でぶら下がっている物がある。 バナナがいくつもぶら下がっている。まるでパン食い競争のように。 飢えている俺達は物欲しそうな顔になっていたことだろう。 でもまさか取りには行けない。 茂みから観察していた俺達の側に、いつのまにか敵の助教が音もなく近づいていた。 どこから現れたのか全く分からなかった。そんなにバナナに気を取られていたのだろうか。 蛇に睨まれた蛙のように、逃げることもできず俺達は息を殺していた。 俺の側にいた学生に助教が近づきそっと肩をたたいて言った。 「捕虜」 その場に何名もいた俺達全員が、助教から見えていたはずだか捕虜になったのはその時2名だったと思う。 捕虜になったら悲惨だ。絶対に捕まってはいけない。 のちの想定では同じような場面で、皆散り散りになって逃げた。 捕虜になった仲間を救出しに行ったとき、その悲惨な待遇を見てしまったからである。 捕まりたくない一心で物音も気にせず全力で逃げた。 だが相手はレンジャーの助教だ。ひとたび掴まれれば学生が獣のように暴れても取り押さえられた。その光景を見ながら助教相手に抵抗は無駄だと悟り、とにかく遠くまで逃げるしかなかった。 幸い俺は一度も捕虜になっていないが、捕虜にな...

潜入

 前方警戒班になった学生が地図とコンパスを使って進路を決めていく。 数名の同行助教らはもちろん最短潜入ルートを知っているが学生が間違えても、遠回りしても何も言わない。 自分達で経路を決め、作戦を遂行するための拠点まで潜入する。 登ったり下ったり、いくつもの山を越えていく。 できるかぎり山の尾根を通っていくが、時には茨や倒木だらけの谷を通らねばならない場合や、片側が急斜面で危ない場所もある。 這うようにして登らねばならないような斜面が続くと一気にばてる。 下りが続くと膝がガクガクになってしまう。 20kgほどある背のうと64式小銃が肩に食い込んでくる。 50kgほどある資材もあり、これは交代で担ぐ。 時間が経つにつれ、感じる重さがだんだん増してきた。 次第にいろんなことを考え始め、神経が過敏になってくる。 喉が渇く。汗が目にしみる。呼吸がつらい。足が重い。 少しでいいから休憩がほしい。 今座ることができるとしたら、どれだけ楽なことだろう。 人間の心は肉体的苦痛に弱い。苦痛から逃れられるならこの命を捨ててしまっても良いとさえ思う。 谷底にちらっと目をやる。 『ここから落ちれば楽になれる』 一瞬そんな考えがよぎることもあった。 だが岩にけつまずいた時、転ばないようにパッと足が前に出る。 足が滑ったら草や枝など、この手は何でも掴もうとする。 からだは反射的に身を守る。からだは最後までそうするのに人間の心とは危ういものだ。やっかいな代物だ。 平時の楽な時はどんな立派なことでも言ったり、できたりする。 だがその行いや考えが本物かどうか、真意が何かは、限界を超えた極限状態になれば分かる。 そこは現実がむき出しになった超リアルな世界だ。 その時は人間の本性が出る。いろんな理屈をつけて普段見ないようにしているもの、抑えているものが目の前に出てきてしまう。極限状態では命がかかっている。したがって人間は自分の身を守ることを第一に考える。ときに見境なく。敵と対峙した時などそれが正解の時もあるだろう。 しかし、レンジャー訓練では仲間がいての自分の命だ。一人で成し遂げられるような任務ではない。本性に自分を委ねてそれで事足りるのなら何のための訓練であり、規律だろうか。それではただのゾンビの集団だろう。 極限状態では無意味な屁理屈やあきらめるための言い訳をやめて、とにかく思考停止に陥らず何...

出撃

現在地から目的地まで、地図を見ると気が遠くなる距離だ。 地図は山々の形状を表わす等高線だらけだ。 到達するには一歩一歩足を前に出し続けるしかない。それしかない。 左足の次は右足。右足の次は左足を出せばいい。意地でもそれをやればいい。 物事を成し遂げるにはすべてこの道理だ。今やるべき事は足を前へと運ぶことなんだ。 そしてどんどん進むためには常に現在地を把握することが大切だ。 進めば景色や地形が変わる。時間が経てば状況が変わる。 人間は知らないあいだにとんでもない思い違いをしていることがよくある。 どうやってそれに気づくか。 放っておいても失敗をして間違いに気づく。 地図を信用して進み、すぐに地図が正しかったことに気づく。 日常生活どんな時でもそうだ。地図とは普遍的な原理原則や法則、神様の教えのようなものだ。 山の奥深い複雑な地形でも、何も見えない真っ暗な夜でも、進めば進むほど深く認識することになる。 『地図は正しい』 しばらく歩き続けると気分が高揚してくる。時々そうなるがいわゆるアドレナリンの分泌によるハイな状態だ。からだの防衛本能ともいえる。 そうなると楽だ。だが苦痛という限界のサインを一時消しているだけだ。 このモルヒネが切れた後、一気に疲労が襲ってくる。 今は山の空気、落ち葉を踏む感触が心地いい。再び山に入ったことでからだが喜んでいるように感じる。足の痛みもない。 どこまででも行ける気がする。 できるだけ長くこの状態が続けばいいと思った。   ← 戻る  |  体験記目次  |  続き →  

隊容検査

作戦や潜入経路などが決まり、これから隊容検査を受ける。 服装や武器弾薬、荷物のチェックだ。 全員整列。助教達が一人ひとり学生を検査する。 不備があると腕立て伏せなどの体力練成が始まる。 なるべく指摘事項が少ないことを願った。 皆が持ち物のあちこちにタバコやアメ、キャラメルなどを隠している。 助教もそれを見つけようと細かい場所まで全て調べる。 見つかると大変な事になる。 例えばアメが見つかったとすれば、もちろんアメは没収され代わりに罰として2~3kgはある石にマジックで〈アメ〉と書かれて、背のう〔背嚢, ザック〕に入れられてしまうのだ。 そのリスクは皆承知で持っていこうとする。飢えの体験がそうさせる。 「こんなところにチョコレート入れやがって」 助教の声だ。誰かが見つかった。 代わりにでかい石を渡される。 他にも携行品の脱落防止の不備や、防水処置の不備など、あちこちで指摘されている。こういう基本的なことができていないと助教は怒る。 俺もいろいろと指摘されたが、お守りの中のタバコと襟の裏のカフェイン(眠気防止の錠剤)は今回は大丈夫だった。後日の想定訓練では見つかってしまったが。 さて隊容検査が終わり、指摘事項の数に応じて全員揃って腕立て伏せが始まった。 これがなかなか簡単には終わらない。 「ロク!……シチ!……ハチ!……」 一で腕を曲げて、二で上げる。顔は起こす。 だんだんからだが支えられなくなってくる。 「声が小さい!」「しっかり腕を曲げろ!」 助教達の声が飛ぶ。上から押さえつけられる。 蹴りも入る。 「腕曲げろコラァ!」「姿勢とれんのかコノヤロー!」 誰かが起きられなくなった。 腕を曲げた体勢のまま、維持する。数は数えられない。 なんとか全員が姿勢をとる。数が数えられる。 だが彼は限界のようだ。必死で腕立て伏せの姿勢をとっているが苦しそうだ。 助教が追い討ちをかける。 「テメー!役者か!?」「役者ヤローが」 〈役者〉とは苦しそうにしている俺達学生に対して使われる軽蔑の言葉だ。 精神的にもどんどん追い詰める。 「貴様のせいで全員が苦しんでるんだぞ!」「終わらねーだろ!」 「テメーはとっとと帰れ!」「原隊復帰(リタイア)しろ!」 容赦なく助教らの罵声が飛ぶ。 だが彼はもう、からだが言うことを聞かないようだ。 助教達の矛先が同期の俺達全員に向けられる。 「おいお前達!あい...

非常呼集

 まだ朝の4時ごろだろうか。 天幕〔テント〕の外に足音がする。 入口のシートをめくって助教〔訓練陸曹〕が入ってくる。 そして笛を吹いた。「ピッ」 「非常呼集。ただちに集合せよ。服装は迷彩服に半長靴、弾帯、戦闘帽着用。 場所は……」 一斉に皆飛び起きて非常な速さで着替える。 次の想定訓練が始まろうとしている。気持ちを切り換えるしかない。 暗闇の中、バディ〔相棒〕どうし声をかける。 「準備いいか?」「準備よし!」 天幕の外で全員整列し、号令によって集合場所まで駆け足で向かう。 キャンプ場の会堂に教官と助教が立っている。 教官が言う。 「報告。小声でせよ」 我々の隊のリーダーである学生長が点呼報告をする。 「第××期!」学生長。 「レンジャー!」隊員及び学生長。 学生長が続ける。 「総員17名、事故なし、健康状態異常なし!」 これからどんな想定訓練かが分かる。 時代はまだ米ソ冷戦が続いていたころだ。 教官が戦況とレンジャー戦闘隊の任務を説明する。〔命令下達〕 「敵ソ連軍一個機械化大隊がさらに進行、……県の……で……」 「情報小隊によれば……する模様。我々レンジャー戦闘隊は……へ潜入し……」 これから地図や武器弾薬など、作戦に必要な装備を整えて出発となる。 役割分担をしてそれぞれ準備にかかる。 長い地獄の訓練がまた始まった。 集中しなければならない。少しでも他の事を考えると気が変になるかもしれない。 俺は頭がおかしくなる事を恐れた。しかし考えるということも消したかった。 いったいいつから俺はここにいるのか。いつまでこれが続くのか。 もう思い出せなくなっていた。   体験記目次  |  続き →

レンジャー訓練写真

  レンジャー養成訓練中の写真 これは体力調整の様子。 「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」 レンジャー訓練は一人の力で乗り越えられるものではない。 自分自身の気力と体力を向上させる以上に、もっと大切なことを学んだ。   ロープ訓練の一環「胆力テスト」(スタンドホール) 命綱を着けて地上約8メートルの高さから手を離し落下する。 ロープへの絶対の信頼感を持つことと、恐怖を克服することが目的だ。   セーラー渡りの模様。もう一つモンキー渡りがある。 握力が非常につらい。手が腫れあがったようにパンパンになる。 モンキー渡りはさらにつらい。膝の裏でロープを引っ掛けるのだが、ぶら下がるため体重がかかり、ロープで擦りつけられて膝の裏とその周辺に血が滲んでくる。 要領をつかむまでが大変だ。   座席懸垂による降下訓練。 これは個人的に好きだった。何度でもやりたくなる。   降下準備よしの姿勢。 「降下用意」の号令で下を確認、降下用意の姿勢をとり、 「降下」の号令で「レンジャー」と言って飛び降りる。   体力調整の20km武装走歩の模様。 戦闘服に64式小銃が懐かしい。   20km武装走歩「全員合格」で記念撮影。   いつどこでも体力練成が始まる。 これは「かがみ跳躍」という体力向上運動のひとつ。 足を前後に開き、ジャンピングスクワット。   レンジャー戦闘隊編成。 想定訓練のため、キャンプ場にベースキャンプを設営。 この場所は俺達レンジャーの第二の故郷だ。 訓練非常呼集を受け、命令下達~隊容検査を経て整列。 出撃前の写真。   山での長距離潜入中の小休止の時。 胸にしまってある地図を取り出し、潜入経路の地形を把握しておく。   潜入後、拠点を設置。 周囲を警戒中。   装備が重く走るのも必死。 これは離脱の時の写真だろうか。 どれだけ走ったか分からない。   最終想定~長距離離脱(約100km)を経て、とうとう駐屯地へ。 すると各部隊の盛大なお出迎えが。自分の名を呼ぶ声が。 栄光の瞬間。レンジャー徽章授与。月桂冠が頭に。 止まらない涙。見れば教官、助教も皆涙ぼろぼろ。 とうとうやったんだという気持ち。 こんなに自分を誇らしく思ったことはな...

レンジャー学生判定基準

レンジャー素養試験 レンジャー訓練に参加するには、まず素養試験を受験し、資格条件を突破した者でなければ参加できない。 毎年各部隊からレンジャーに志願する者がいる。 志願の理由は人それぞれ想いがあるだろう。 何を好んでわざわざキツイ訓練に行くのかわからない、という声もある。 怪我で原隊復帰する者、体力的精神的についていけなくて脱落する者も出てくる。中には一時精神に異常をきたす者が出るほどの訓練だ。死亡事故も僅かではあるが起きている。 私が参加した時は、素養試験受験者が三十何名いたが試験にパスしたのは二十名ほどだった。 そして最終的に全てのレンジャー訓練の課程を修了したのは16名である。 レンジャー教育の目的 RANGER教育は、選抜された隊員に対し主として挺進行動により困難な状況を克服して任務を完遂する能力及び精神力を付与することを目的とする。 昭和後期当時のレンジャー学生判定基準 年齢 36歳以下 身体検査 背筋力:150kg以上のもの 脈拍:運動後の脈拍を測り、脈拍数が一定の基準以下のもの 血圧:最高血圧140以下~100以上、最低血圧89以下~60以上 心電図:正常なもの 握力:左右とも40kg以上のもの 視力:(1)裸眼視力0.6以上、又は裸眼視力0.2以上で矯正視力1.0以上のもの (2)夜間視力が正常で眼科疾患等のないもの 色覚:正常なもの 肺活量:3,200cc以上 尿検査:糖、たんぱくとも陰性なもの 体力検定 次の基準以上のもの 300m疾走(60m折返し):60秒以内 手榴弾投てき:30m以上 土のう運搬50m(50kg担いだ状態から):14秒以内 懸垂:最高回数 腕立て伏せ:最高回数 起き上がり(2分以内):最高回数 かがみ跳躍:最高回数 2000m持久走(64式小銃執銃):9分30秒以内 体力検定の実施要領 全ての種目を1日で終了する 戦闘服上下、戦闘帽、弾帯、半長靴で実施する 上記基準で「最高回数」と書かれた種目がある。実際には判定基準があるがレンジャーの資格検査は自己の持てる全ての力を出しきることを基本とするので、あえて記載しない 水泳技能 水泳検定基準2級以上 泳法自由:100m以上 潜水:10m以上 立泳ぎ:1分以上 水泳技能に応じた自己安全法及び溺者救助法を修得しているもの 小火器射撃技能 小銃射撃検定基準3級以上(第1又は第2検定) ...

レンジャー訓練とは

  陸上自衛隊レンジャー [RANGER]概要 陸上自衛隊のレンジャーは、昭和30年、陸上自衛官の幹部2名による米軍RANGER課程入校にその起源がある。 翌年の昭和31年10月、富士学校において陸上自衛隊レンジャー訓練が開始され、ここでレンジャー課程を修得した幹部・陸曹が基幹要員となり、全国の部隊レンジャー訓練も始められ、引き継がれていくことになる。 レンジャー訓練は陸上自衛隊普通科連隊のレンジャー要員として、主に挺進行動により困難な状況を克服して任務を遂行するための不屈の精神力と、知識及び技能を修得させる訓練である。 レンジャーは主力から独立して行動する少数精鋭で編成された戦闘隊であり、そのレンジャー隊員はレンジャーとしての知識や技能はもとより、厳正な規律、強靭な体力、即時即応の機敏な判断力と行動力などが要求される。 このため、訓練で実施する内容は陸上自衛隊において最も苛酷なものとされ、約2ヵ月半にわたって気力体力の限界に挑戦し不撓不屈の精神力を養い、いかなる困難をも克服して任務を完遂する能力を養成する。 レンジャー養成訓練 以下の内容は昭和後期のものであり、現在では世界情勢に合わせて変更されているはずである。 レンジャー訓練は、大きく分けて基礎訓練と行動訓練の2つに分けられる。 1.基礎訓練 主としてレンジャーに必要な体力・気力を練成するとともに、行動訓練に必要な基礎的技術に関する知識・技能を修得することを目的とする。 2.行動訓練 レンジャー訓練の主体をなすものであり、各種教育における潜入・襲撃・伏撃・離脱等の要領を体得するとともに、強靭な体力及び不屈の気力を練成することを目的とする。 基礎訓練 体力調整その1 腕立て伏せ・起き上がり・胴回し・かがみ跳躍・懸垂・綱の登降・持久走など体力向上運動。 コンパスコース コンパスと歩測による目的地到達。 水路潜入 ボートの取り扱い、水路からの潜入訓練。 格闘 徒手格闘術、敵兵の隠密処理法。 ロープ訓練(レンジャー塔) セーラー/モンキー/逆水平ホール/スタンドホール/ななめセーラー/フットロック/座席懸垂/応用懸垂/戦闘降下/確保/リペリング/バランス/チムニー/プルージック登降/背負搬送などレンジャー塔で実施。 体力調整その2 体力調整の種目を小銃を携帯して実施。 障害走(軽装) 障害走コースを軽装で実施。...