「五輪書」フェイントで相手の思惑を見る

宮本武蔵『五輪書』 
火之巻 かげをうごかすと云事 
より。

一 かげをうごかすと云事。
かげをうごかすと云ハ、
敵の心のミへわかぬ時の事也。
大分の兵法にしても、
何とも敵の位の見わけざる時ハ、
我方より強くしかくる様にみせて、
敵の手だてを見るもの也。手だてを見てハ、
各別の利にて勝事、やすき所也。
又、一分の兵法にしても、
敵うしろに太刀を搆、脇に搆たる様なるときハ、
ふつとうたんとすれバ、
敵思ふ心を太刀にあらはすもの也。
あらはれしるゝにおゐてハ、其まゝ利をうけて、
たしかにかちをしるべきもの也。
油断すれバ、拍子ぬくるもの也。
能々吟味有べし。


陰を動かすというのは、敵の思惑が読めない時のことである。
大分の兵法(合戦)にしても、敵の態勢を見分けられない時は、こちらから強く攻撃を仕懸けるように見せて、敵の手だてを確認するのである。それが確認できれば、まったく別の戦法によって勝利は容易となる。

また、一分の兵法(個人戦)にしても、敵が後方に太刀を搆えたり、脇に搆えているような時は、こちらが「ふっ」と打つふりをすれば、敵の思いが太刀に現われるものである。それが分かれば戦いで優位に立てるのである。油断すれば、拍子が抜けることになる。よくよく吟味あるべし。

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