「五輪書」大工の棟梁に学ぶリーダーシップ

宮本武蔵『五輪書』 
地之巻 兵法の道を大工にたとえ
より抜粋。

・・・
大工の棟梁ハ、堂塔伽藍のすみかねを覚へ、
くうでんろうかくの指圖をしり、
人々をつかひ、家々を取立事、
大工の棟梁、武家の棟梁も同じ事也。
・・・
棟梁におゐて、大工をつかふ事、
其上中下を知り、或ハ床まはり、
或ハ戸障子、或ハ敷居、鴨居、
天井已下、それ/\につかひて、
あしきにハ、ねだをはらせ、猶悪きにハ、くさびを削せ、
人を見分てつかヘバ、
其渉行て、手ぎハ能もの也。
はかのゆき、手ぎハよきと云所、
物ごとをゆるさゞる事、たいゆうを知る事、
氣の上中下を知事、いさみをつくると云事、
むたいを知と云事、
か様の事ども、棟梁の心持に有事也。
兵法の利、かくのごとし。


大工の棟梁は、建築物全般の墨付けを覚え、宮殿楼閣の設計を理解し、人々を使い家を建てる。大工の棟梁も武家の大将も同じことである。

棟梁が大工を使う場合、その腕前に応じて、ある者は床廻り、ある者は戸障子、ある者は敷居・鴨居・天井など、それぞれに振り分け、腕の悪い者には根太(ねだ)を張らせ、もっと悪いのには楔(くさび)を削らせる。人を見分けて使えば、捗どって手際のよいものである。

捗り、手際がよいというところは、何事も緩めず厳しく、実体と機能、気質の上中下をよく知り生かし、勇み勢いをつくり出し、でたらめなことはしない。
このようなことが、棟梁の心持にあることである。
兵法の利も、これと同じである。

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