「五輪書」四つ手を放す

宮本武蔵『五輪書』 
火之巻 四手をはなすと云事

一 四手をはなすと云事。
四手をはなすとハ、敵も我も、同じこゝろに、
はりあふ心になつては、
戦はかゆかざるもの也。
はりあふ心になるとおもハヾ、其まゝ心を捨て、
別の利にて勝事をしる也。
大分の兵法にしても、
四手の心にあれば、はかゆかず、
人も多く損ずる事也。はやく心を捨て、
敵のおもはざる利にて勝事、専也。
又、一分の兵法にても、
四手になるとおもハヾ、其まゝ心をかへて、
敵の位を得て、各別かはりたる利を以て
勝をわきまゆる事、肝要也。
能々分別すべし。


敵もこちらも同じ心持になって、張り合う気持になってしまうと、戦いの見通しがつかなくなるものである。意地の張り合いみたいなことになると思ったら、すぐにその心を捨てて、別の手を打ち確実に勝て。これが四つ手を放す、ということである。

大分の兵法(合戦)にしても、四つ手の心があっては、目処がつかず、兵も多く損耗することになる。早くその心を捨てて、敵の予想もしない利で勝つこと、これが大事である。

また、一分の兵法(個人戦)でも、四つ手になると思えば、ただちに心持を変えて、敵の態勢を把握して、まったく違う別の利を使って勝つ、それをわきまえることが肝要である。よくよく分別すべし。

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