「五輪書」武士の心得

宮本武蔵『五輪書(ごりんのしょ)』 
地之巻より抜粋。

・・・
大かた武士の思ふ心をはかるに、
武士ハたゞ、死と云道を嗜む事と
覚ゆるほどの儀也。
死道におゐてハ、武士ばかりに限らず、
出家にても女にても、百姓以下に至迄、
義理をしり、恥をおもひ、死する所を
思ひきる事は、其差別なきもの也。

武士の兵法をおこなふ道ハ、
何事におゐても、人にすぐるゝ所を本とし、
或ハ一身の切合に勝、或ハ数人の戦に勝、
主君のため我身のため、
名をあげ身をもたてんとおもふ、
これ兵法の徳を以てなり。

又、世の間に、兵法の道を習ても、
實のとき、役にハ立まじきとおもふ
心あるべし。其儀におゐては、
何時にても役に立様に稽古し、
万事に至り、役に立様におしゆる事、
是兵法の実の道也。



武士なら、死という道を嗜むことを心得ているものだが、
しかし、それは武士に限らず出家者も女も百姓でさえも、義理を知り恥を思い、死に臨んで思い切る心は同じだろう。

ならば武士なら、兵法において人より優れ、戦いで勝て。
主君のため我身のために、武士が名を揚げ身が立つのも、これは兵法によるのである。

世間では、兵法を習っても実践では役に立たないと考えるだろうが、
いつでも役に立つように万事稽古するのが真の兵法の道なのである。

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