防衛大学校の卒業式における吉田茂の訓示

1957年(昭和32年)2月防衛大学校第1回卒業式での総理大臣訓示。
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君達は自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることなく、自衛隊を終わるかもしれない。きっと非難とか誹謗ばかりの一生かもしれない。御苦労だと思う。

しかし、自衛隊が国民から歓迎されちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡の時とか、災害派遣の時とか、国民が困窮し国家が混乱に直面している時だけなのだ。

言葉を換えれば、君達が日陰者である時の方が、国民や日本は幸せなのだ。どうか、耐えてもらいたい。

一生御苦労なことだと思うが、 国家のために忍び堪え頑張ってもらいたい。 自衛隊の将来は君達の双肩にかかっている。 しっかり頼むよ。

    1957年(昭和32年)3月26日 防衛大学校 第1期学生 卒業式にて
                      吉田茂 元内閣総理大臣 訓示

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自分が現職の頃は今のように自衛隊が活躍しているような場面をテレビで見ることはまずなかった。自衛隊がニュースで取り上げられるのは自衛隊機が墜落しただの、現職自衛官が逮捕されただのという、そんなのばかりが報道された。

海外派遣の時も左翼が駐屯地の前でデモを行い、自衛官に罵声を浴びせていた。とにかく何か目立てば各方面から叩かれまくった。もちろん支持してくれる人達もいるには違いないが、そういう人達や団体も世間一般からは、ちょっと変わった風に見られていたと思う。日本社会の風潮がそんな感じだった。平和な日本、モノはあふれカネ余りの浮かれた日本。しかし、自衛隊が日陰者である時の方が国民は平和なのである。だから自衛隊支持側は非難されようと黙して何も語らないのだ。

阪神大震災以降、自衛隊の災害派遣での活動が徐々に社会に認知されてきた。それは吉田総理大臣の訓示で述べられたように、国民が困窮し国家が混乱に直面している時だからだ。

自衛隊が災害派遣で役に立つのは、日頃の厳しい軍隊式訓練のお陰だ。有事に備え国防を真面目にやっているからだ。国難の時には自分の家族を置いて、危険な任務につかねばならない。本当なら「非難とか誹謗ばかりの一生」だなんて、それではあまりに恩知らずというものだ。

あまり持ち上げる必要はないが、戦後長い間の自衛隊への誤解はそろそろ解消しておくべきだ。

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